ぱあとなあ名簿登録者への後見制度支援信託適用に対する見解

【見解】
ぱあとなあ名簿登録者は、社会福祉士として後見活動を実践するにあたってさまざまな取組みを行っている専門職であり、後見制度支援信託が「親族後見人による不正行為を未然に防止し、後見制度を利用する方の財産を保護するために家庭裁判所が採り得る選択肢(オプション)として導入」(『実践成年後見』No.54「後見制度支援信託の目的とその運用状況」最高裁判所)されたものであるとの理解から、その適用は適切ではないと考えます。

【理由】

  1. 本人の意思・意向に沿わない制度であること
    障害者権利条約の批准から、包括的に代理権を付与する後見類型が特に問題であると指摘されています。この後見制度支援信託は、後見類型のみに適用され、また、信託の必要性を判断するのは、親族や後見人等の支援者側の意向となります。不正防止のために適用される制度であるとしても、本人側の希望や意向を尊重できる仕組みに変える必要があると考えます。

  2. 「支援」が支援者側(後見人・家庭裁判所)の支援として使われていること
    1.のように、支援者側の利便性やリスク回避のために適用される制度である以上、身上監護面の選択肢を狭めることにつながることは否定できません。財産管理を適正に行うことは、保護的視点ばかりではなく、本人のための積極的活用という視点が不可欠であり、本人の権利擁護や身上監護が後退しないよう、社会福祉士は対応しなければならないと考えます。(2011年11月6日の社団法人日本社会福祉士会山村睦会長による見解表明)

  3. 後見人等に対する監督体制や支援機能への取組みへの意見提言が求められていること
    わが国においても、成年後見制度利用促進法が施行され、その基本方針のなかには、成年後見人等への監督のみならず、相談の実施や助言その他の支援に係る機能を強化するために必要な措置を講ずる、とあります。後見制度支援信託は、監督の代替案ではない、という大原則のもとにスタートしておりますが、そのことを十分に理解し、本人にとってどのような機能や仕組みが必要なのか、考えていく必要があります。


平成29年1月16日
公益社団法人 東京社会福祉士会 会長 大輪典子