生活保護基準の引き下げに強く反対する会長声明
政府は12月22日、生活保護における生活扶助費の削減を盛り込んだ2018年度予算案を閣議決定しました。生活保護については、生活扶助の基準生活費や母子加算を引き下げ、大都市部を中心に高齢者世帯や子どものいる世帯など生活保護費を最大5%減するというものです。
私たち社会福祉士は、子ども、障害者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行う社会福祉分野の専門職として、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活保護基準額の引き下げに反対します。
生活扶助基準については、5年に1度実施される社会保障審議会生活保護基準部会の検証結果が示されたところです。基準の妥当性の検証については年収階級第1・十分位(年収が下位10%の層)との比較による方式をとっていますが、そもそも、生活保護の捕捉率(生活保護基準以下の世帯で、実際に生活保護を受給している世帯数の割合)がかなり低い中で、生活保護基準以下で生活する人が少なからず含まれる低所得者層との比較検証は、妥当性を著しく欠くものです。このことは2013年の生活保護基準部会の報告書でも指摘されているところです。また、これまで比較検証の指標とされてきた消費者物価指数を、2013年度から厚生労働省が独自の「生活扶助相当CPI」に突然変更したことも合理的な説明が不十分と考えます。こうした検証手法をもとにした生活保護基準の見直しは、引き下げのスパイラルにしかなりません。
私たち社会福祉士は、日々の業務の中で、生活保護を受給している高齢者や子どものいる世帯に出会います。冠婚葬祭の付き合いもままならぬなか、生活費を切り詰めて生活する人々が存在しています。地域の中で孤立する場合もあり、生活水準の差が人と人との交流を妨げている状況もあります。生活困窮している単身高齢者の増加や貧困の連鎖を生んでいる家庭環境や養育能力の課題は深刻で、課題解決に向けて社会福祉士は支援しています。生活保護基準の引き下げは、国民健康保険料や介護保険料の減免、高額療養費の限度額、介護保険の高額介護サービス費、最低賃金等々にも影響するものです。2013年の引き下げに続く生活保護基準の引き下げは、生活保護受給者や生活困窮者の生活をさらに厳しくしていくものであり、健康で文化的な最低限度の生活を脅かすものであり、貧困のスパイラルから抜け出すことを困難にするものです。
すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活が営めるよう、社会保障制度の根幹をなす生活保護制度の堅持を求めるとともに、生活保護基準額の引き下げに断固反対します。
2017年12月28日
公益社団法人 東京社会福祉士会 会 長 大輪 典子